先日、証券取引等監視委員会が、かつて「誠備グループ」を率いて数々の仕手戦を繰り広げた加藤氏の関係先に強制捜査に入りました。
加藤氏は現在「般若の会」なる投資グループを率いており、証券取引等監視委員会は、加藤氏が、同グループのホームページ上のコラムに根拠のない株の情報を載せる「風説の流布」を行った疑いを持っているもようです。
そこで今月は、金融商品取引法で禁止されている「風説の流布」および「相場操縦」について、確認したいと思います。
「風説」には「虚偽の」という限定が付されていないことから、流布された情報が虚偽であることまでは必要なく、合理的な根拠がないことを意味すると解されています。
従って、流布した情報がたまたま客観的事実に合致していたとしても、「風説」に該当し、行為者が「合理的な根拠なしにそれを語っているという認識」を有していれば犯罪が成立することになります。
「流布」とは不特定多数の者に伝達することをいい、例え特定少数の者に伝達するときでも、その特定少数を通じて、不特定多数の者に伝達される可能性があれば「流布」に該当し得ることになります。
例えば、記者会見を開いて話をする事例や、インターネット上の掲示板に情報を書き込む事例が過去には摘発されています。
さらに「風説の流布」が「有価証券の取引のため」「相場の変動を図る目的」でなされたことが必要になります。
「有価証券の取引のため」とは、当該証券取引を自己又は第三者が有利に行う目的や、他人の証券取引を不利に行わせる目的を意味し、「相場の変動を図る目的」とは、相場を高騰させ、もしくは下落させる意図をいうと解されています。
1項は偽装取引として、同一人による権利移転を目的としない仮装売買および複数者が予め通謀する馴合売買を禁止しています。
偽装取引は、市場の外部者には正常な取引から区別することのできない記録上の取引を作り出す上、有価証券の売買取引等の状況は、出来高等として投資家に公表されるため、偽装取引を行うことで投資家は投資判断を誤り、その投資家の参加によって価格形成は歪められることになります。
偽装取引は「他人に誤解を生じさせる目的」を有していることが要件となりますが、他人に誤解を生ぜしめる目的以外で偽装取引を行うことは通常有り得ません。
2項1号は、「他人を誘引して証券売買を行わせる目的」の「相場を変動させるべき一連の売買取引」を規制対象としています。
「相場を変動させるべき一連の売買取引」とは、価格変動の可能性を有する行為をいいます。しかし、証券売買取引から価格変動の可能性を完全に排除することは不可能ですから、何をもって違法な売買取引と認定するかは極めて難しい問題です。
過去の裁判例でも、「相場を支配する意図をもってする取引」と主観的要素を加味して判断したものもあれば、「相場の値動き、取引全体に占める当該取引の割合、取引の態様などの事情を考慮して判断する」と客観的事情のみから判断すべきとするものもあります。
そして「他人を誘引して証券売買を行わせる目的」とは、人為的に相場を変動させているにも関わらず、株価は現実の需給関係により形成されていると誤解させて、他者を取引に誘い込むという行為者の意図をいうと解されます。
次回、風説の流布、相場操縦に関する事例を検討したいと思います。
[本紙3月16日付3面]
加藤氏は現在「般若の会」なる投資グループを率いており、証券取引等監視委員会は、加藤氏が、同グループのホームページ上のコラムに根拠のない株の情報を載せる「風説の流布」を行った疑いを持っているもようです。
そこで今月は、金融商品取引法で禁止されている「風説の流布」および「相場操縦」について、確認したいと思います。
1 風説の流布
金商法が禁止するのは「有価証券の募集、売り出し若しくは売買その他の取引のため、又は相場の変動を図る目的をもって」「風説を流布」することです。「風説」には「虚偽の」という限定が付されていないことから、流布された情報が虚偽であることまでは必要なく、合理的な根拠がないことを意味すると解されています。
従って、流布した情報がたまたま客観的事実に合致していたとしても、「風説」に該当し、行為者が「合理的な根拠なしにそれを語っているという認識」を有していれば犯罪が成立することになります。
「流布」とは不特定多数の者に伝達することをいい、例え特定少数の者に伝達するときでも、その特定少数を通じて、不特定多数の者に伝達される可能性があれば「流布」に該当し得ることになります。
例えば、記者会見を開いて話をする事例や、インターネット上の掲示板に情報を書き込む事例が過去には摘発されています。
さらに「風説の流布」が「有価証券の取引のため」「相場の変動を図る目的」でなされたことが必要になります。
「有価証券の取引のため」とは、当該証券取引を自己又は第三者が有利に行う目的や、他人の証券取引を不利に行わせる目的を意味し、「相場の変動を図る目的」とは、相場を高騰させ、もしくは下落させる意図をいうと解されています。
2 相場操縦
金商法159条は、1項で偽装取引を禁じ、2項で現実取引による相場操縦を禁止しています。1項は偽装取引として、同一人による権利移転を目的としない仮装売買および複数者が予め通謀する馴合売買を禁止しています。
偽装取引は、市場の外部者には正常な取引から区別することのできない記録上の取引を作り出す上、有価証券の売買取引等の状況は、出来高等として投資家に公表されるため、偽装取引を行うことで投資家は投資判断を誤り、その投資家の参加によって価格形成は歪められることになります。
偽装取引は「他人に誤解を生じさせる目的」を有していることが要件となりますが、他人に誤解を生ぜしめる目的以外で偽装取引を行うことは通常有り得ません。
2項1号は、「他人を誘引して証券売買を行わせる目的」の「相場を変動させるべき一連の売買取引」を規制対象としています。
「相場を変動させるべき一連の売買取引」とは、価格変動の可能性を有する行為をいいます。しかし、証券売買取引から価格変動の可能性を完全に排除することは不可能ですから、何をもって違法な売買取引と認定するかは極めて難しい問題です。
過去の裁判例でも、「相場を支配する意図をもってする取引」と主観的要素を加味して判断したものもあれば、「相場の値動き、取引全体に占める当該取引の割合、取引の態様などの事情を考慮して判断する」と客観的事情のみから判断すべきとするものもあります。
そして「他人を誘引して証券売買を行わせる目的」とは、人為的に相場を変動させているにも関わらず、株価は現実の需給関係により形成されていると誤解させて、他者を取引に誘い込むという行為者の意図をいうと解されます。
次回、風説の流布、相場操縦に関する事例を検討したいと思います。
深堀健二氏プロフィール
八重洲総合法律事務所弁護士(証券アナリスト資格保有)。平成5年慶應義塾大学法学部法律学科卒、都市銀行入行、証券会社勤務を経て平成22年12月弁護士登録。
八重洲総合法律事務所弁護士(証券アナリスト資格保有)。平成5年慶應義塾大学法学部法律学科卒、都市銀行入行、証券会社勤務を経て平成22年12月弁護士登録。
[本紙3月16日付3面]
